起業する、もしくは新しく事業を始める時に、ロゴマークって絶対あった方がいいですよね。
お客様に対してのブランディング戦略はもちろんですが、制作していく過程で、事業のコンセプトや目指す未来などがよりクリアに具体的になっていくという効果もあると思います。
今回は、グラフィックデザイナー歴20年以上の私が、ロゴマークを制作する時に使っている「ヒアリングシート」をサンプルに、どんな風にロゴマークを制作していくかを説明していきます。
クライアントワークでロゴマークを制作するデザイナーさんはもちろん、自分でロゴマークを作ってみたいと思っている事業主のみなさんにも参考になると思うので、ぜひ最後まで読んでくださいね☆
ヒアリングシートで情報を整理
ロゴマークはいきなりデザイン作業に入るのではなく、クライアントさんから、ロゴマークを作る理由や見た目の好みなど、色々聞き出します。
一言でロゴマークといっても、社名(文字)をデザイン化したものから、何かモチーフになる具体的なものをデザインしたもの、概念的な形のないものをデザインしたものなど様々です。
目指すべきカタチがどういうものか、クライアントと最初に共有できれば、作る段階で「何か違う」ということが減らせるかもしれません。
\ ご自由にお使いください/
今回は、わかりやすくするために、フラワーアレンジメントをネット販売するクリココさん(クライアント)の場合で説明してみます!
まずは、基本情報
1.会社名→cre.co.co(クリココ)
2.会社名の由来→creativeとcoraborationとcooporateの頭文字をとったもの。
3.どんな事業内容ですか?→地元産の花にこだわった、フラワーアレンジメントを宅配
4.どんなサービス、商品がありますか?価格も教えてください。→記念日用フラワーアレンジメント5000円〜。毎月お届けするお花の定期便5000円〜。
5.お客様はどんな方達ですか?→お花の産地にもこだわっている方。お好みを伺ってアレンジメントを作ります。
ここまでは、すでに事業をされている人ならたぶんスラスラかけると思います。
これから起業しようかなぁという人でも、そう苦労なく書けるのではないでしょうか?
ロゴマークを作る時に知りたい3大情報
ここからが、デザインに必要なコアな情報です。
クライアントが事業を始めた思いなどちょっと深堀してみたいと思います。
こういう部分が、ロゴマークを作る際にとても参考になります。
1.この事業を始めるきっかけ。どうしてこの事業を始めようと考えましたか?→生花店に勤めて10年以上。その中で知り合ったお花の生産農家さん達が一生懸命お花を育てる姿を見て、花を売る私たちももっと花を大事に売らなければならない。具体的には無駄のでない売り方をしたいと思い、店舗販売ではなくインターネットで注文を取り、必要な分だけお花を仕入れるというやり方に挑戦したいと思ったので。
2.この事業は5年後、10年後、どのようにしたいと思いますか?→実店舗を持ちたいです。
3.メインの商品は何ですか?→お花の地産地消がウリです。特に地元にバラの栽培農家さんがあるので、ここのバラをメインにしていきたいです。
長文になっても構わないので、できるだけ詳しく書いてもらいましょう。
事業を始めた本人には、当然と思っていることでも、第三者にはなかなか伝わらない部分だったりします。ましてや、デザイナーは、クライアントの事業分野の素人です。詳しく話さないと感覚的ではわからないことが沢山あります。
ここを面倒くさがって飛ばしてしまうと、なんかちょっとイメージが違うなぁというロゴマークができてしまったりします。
お客さん側からみた、クライアントの事業のイメージは?
次に、お客さん側からみた、Aさんの事業のイメージを考えてみましょう。
あなたがお客様になったと仮定して、感じることでも構いません。
1.Aさんの事業内容を知らない人に説明する時、なんと教えますか。
2.お客様は、Aさんサービス・商品をどのようなきっかけで知りますか?
3.お客様は、Aさんのサービス・商品を利用して、どのような気持ちになりますか?
4.お客様は、他社ではなく、Aさんサービス・商品を利用するのはなぜですか?
どうでしょうか?BtoCの事業だと答えやすいかと思いますが、BtoBだとちょっと難しいかもしれません。ちょっと想像力を膨らませて、お客様の目線になって考えてみてください。
このお客様目線で考えるというのを、「デザイン思考」って言ったりします。
同業他社のロゴマークを調べてみましょう
最後に、マーケティング的視点での質問になります。ロゴマークは、他社と区別するためのマークと言っても過言ではありません。同業他社について、できるだけAさんに調べてもらいましょう。
1.ずばり、こんな会社を目指したいという、お手本にしたい企業はありますか?
2.同業他社にあって、あなたの事業にあるセールスポイントは何ですか?
3.あなたは、どのような方にお客様になって欲しいですか?
最後の最後に…ちょっとだけ作業をお願いします。
最後の最後に…ちょっとだけ作業をお願いします。
1.同業他社の社名を思いつくだけあげてみてください。できれば、その会社のロゴマークを調べてください。
ここまでできれば、完璧です!
私なら、こうデザインします
これは実際にクライアントさんに見せた「ラフ案」です。クライアントさんに「こういう形にして」という明確なものがあればいいのですが、そうでない場合は、鉛筆でざっくりした形をいくつか提案してあげるのがいいと思います。
クリココさんの場合、こういう手描きラフ案を30個以上描きました。可能なら、クライアントさんと対面しながら一緒に描いてもいいかもしれません。
こうやって描いたラフ案から、いくつか候補を絞ってもらいます。
そして、あれこれ修正して出来上がったロゴがこちら。
今回は、こういう使い方もできますよというバリエーションも制作しました。
どうやって納品する?
ロゴマーク場合、基本的にはデータのみの納品です。
クライアントさんが使いやすいように、png(背景透過)、jpg、pdfの3パターンがあるといいと思います。
また「ロゴマニュアル」という、ロゴマークの使い方を記したものもお渡ししましょう。
ロゴマニュアルは、あれば親切っていうくらいなので、面倒ならなくても全然大丈夫です。
大きな会社からの依頼で、デザイン費用もたくさんいただける場合などは、提出した方がいいかもって感じはします。
私は、このロゴマニュアルに、以下の注意書きを入れています。
※シンボルマークの、著作権・使用権等すべての権利はcre.co.coに帰属します。ただし、無断でデザインを改変することはできません。
※ロゴタイプは使用は自由ですが、既存フォントのため著作権等は制作者に帰属します。
今回のデザインでは、ロゴタイプ(文字)は、普通のフォントを使っています。ですので、このフォントの著作権はフォントの制作者にありますという意味です。
文字の部分は、予算の都合上、既存フォントを使用しています。この点に関しては、最初にクライアントさんとお話ししておいた方がいいですね。
まとめ:ロゴマークの制作は結構時間がかかります!
シンプルなカタチだから、すぐにできるでしょ!って思われがちですが、ロゴマークの制作にはかなり時間がかかります。シンプルだからこそ、他社と似たようなものにならないために一工夫が必要だったりします。この一工夫がなかなかたどり着けないんですよね…
今回はカタチの話だけでしたが、これ以外に、色をどうするっていうのも一苦労ですし、他社のロゴマークを調べたりする調査時間も考えると…
ということで、クライアントワークにせよ、自分で作るにせよ、ロゴマークは一度決めたらなかなか変更できないので、慎重に制作をしてくださいね!